更新日:2026年8月28日

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山梨から、桃の常識を変えていく

桃ソムリエ太鼓判!山梨県オリジナル品種「夢桃香」と「夢みずき」

山梨県で開発された2つの桃、「夢桃香」と「夢みずき」

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山梨県が誇る果物のひとつ「桃」。県内では6月下旬から9月上旬にかけて、さまざまな品種がリレー形式で出荷され、市場への安定供給を支えてきました。しかし、そんな山梨の桃づくりには、長年の課題がありました。

その課題を克服するために開発されたのが、山梨県オリジナル品種の「夢桃香(ゆめとうか)」と「夢みずき」です。従来の桃づくりの常識を覆す可能性を秘めたこの2品種は、今、着実に市場で存在感を高めています。

「夢桃香」「夢みずき」誕生の背景

梅雨や猛暑に負けない「おいしい早生品種」を求めて

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桃は本来、太陽の光をたっぷりと浴び、乾燥した暑い気候を好む果物です。しかし、桃の出始めとなる6月下旬から7月上旬は、梅雨の曇天や長雨の影響を受けやすい時期でもあります。従来の早生品種では、長雨や日照不足によって「糖度が上がらない」「色づきが悪くなる」ことがありました。さらに近年は、気温上昇の影響で収穫前後に果実が急速に軟化し、商品価値の低下につながることもあります。こうした気象条件による品質のバラつきが、生産現場の大きな課題となっていました。

そこで山梨県果樹試験場は、「梅雨や猛暑に負けない、新しい桃をつくろう」と品種開発に着手しました。「長年にわたる研究の末に誕生したのが、高温の影響を受けにくい『夢桃香』と、梅雨期でも安定した品質を維持しやすい『夢みずき』です」そう語るのは、山梨県果樹試験場の新谷勝広育種部長です。この2品種は、これからの山梨の桃づくりを支える存在として期待されています。

甘さと新食感!驚異の日持ち性が特徴の硬肉桃「夢桃香」

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夢桃香は、山梨県果樹試験場が、平成18(2006)年に「モモ山梨6号(ちよひめ×八幡白鳳)」と「日川白鳳」を交雑し、14年の歳月をかけて誕生した品種です。平成31(2019)年に「甲斐トウ果17」として品種登録、令和2(2020)年に「夢桃香」の名称で商標登録されました。6月下旬から7月下旬に成熟する早生品種でありながら、高温の影響を受けにくく、優れた日持ち性を備えた夢桃香は、これまでの桃の常識を覆す可能性を秘めています。

新感覚の歯ごたえと十分な甘み

「硬い桃」と聞くと、カリカリとした食感を想像するかもしれません。しかし夢桃香は、それとは一線を画す心地よい歯ごたえが特徴です。しっかりとした肉質の硬肉桃(※1)でありながら、噛めば口いっぱいに豊富な果汁が広がります。糖度13度前後の強い甘みがありながら、穏やかな酸味があるため後味はさっぱり。これまでの桃のイメージを覆すようなおいしさが魅力です。

日持ちの秘密

一般的な桃は収穫期が近づくと植物ホルモンの一種であるエチレンが多く発生し急激に軟化します。特に、高温の影響を受けると早生桃は軟化があっという間です。一方、夢桃香は遺伝的にエチレンの発生量が少ない品種です。そのため、抜群に日持ち性がよく、糖度が安定するのです。輸送性にも優れており、高品質な桃を安定して消費者へ届けることができます。

流通に耐える驚異の日持ち性!切っても茶色くなりにくい

一般的な桃は、輸送中の傷みや店頭での売れ残りによって過熟し、廃棄が付き物でした。しかし硬肉桃である夢桃香は、流通過程で傷みにくく、「傷みを理由に廃棄されることがほとんどありません」と新谷部長は語ります。

さらに夢桃香の驚くべき特徴は「果肉が茶色く変色しにくい」という点です。果肉に含まれる総ポリフェノール量が少ないため、カットしてから1日経ってもほとんど変色せず、その特性からスイーツ用途として、製菓・加工業界からも注目を集めています。

王道の桃「夢みずき」とは

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山梨県では、早生品種の収穫時期が梅雨と重なるため、食味の低下や色づきの不安定さが課題とされてきました。そうした課題の克服を目指して開発されたのが「夢みずき」です。山梨県の代表品種「白鳳」の前に収穫できる桃を育成するため、山梨県果樹試験場が平成12(2000)年に「浅間白桃」と「暁星」を交雑し、14年の歳月をかけて誕生しました(平成25(2013)年に品種登録)。7月中旬に成熟期を迎える早生品種で、初夏の贈答用としても需要が高まっており、今後の主要品種として期待されています。

梅雨時期の桃なのに、しっかり甘い

公募によって名付けられたその名のとおり、「夢のようにみずみずしく、おいしい」のが最大の魅力です。従来の早生品種に比べて酸味や渋み、繊維が少なく、口に入れた瞬間に豊かな甘みがダイレクトに広がります。糖度は15度前後。それでいて、ただ甘いだけでなく、桃らしい華やかな香りとジューシーな果汁をしっかりと楽しめる、「これぞ桃」と言える王道のおいしさです。

長雨にも負けない色づきの良さ

夢みずきは、研究段階から「色づきが良い」と注目されていた品種です。太陽光が不足しがちな梅雨時期でも、天候に左右されにくく、しっかりと色づきます。

一方で、色づきが先行しやすい特性もあるので、一つひとつの果実を丁寧に見極めながら収穫するには、生産者の経験と技術が欠かせません。

ずっしりとした大玉の存在感

夢みずきは、手に取ったときのずっしりとした重みも魅力のひとつです。果実は350~400グラムほどにもなり、存在感を放ちます。

果形は扁円形で、やや個性的な形状になることもありますが、それもこの品種ならではの特徴です。見た目の個性が品質に影響することはなく、高い糖度と優れた食味を備えています。

生産者の声

名誉桃ソムリエが語る「育てやすさ」と「未来への期待」

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「これからの山梨の桃づくりをガラリと変えるポテンシャルを持っています。」とふたつの桃に太鼓判を押すのは、桃栽培歴45年のベテラン生産者であり、山梨県から「名誉桃ソムリエ(※2)」の認定を受けた反田公紀さんです。

桃づくりは、見た目以上に繊細な仕事です。桃は同じ木でも一斉に熟すわけではありません。樹の上部から下部へ順に熟していくため、生産者は脚立を何度も昇り降りしながら、一つひとつの果実の状態を確かめて収穫します。しかも、色づきだけでは本当の熟度はわかりません。店頭に並ぶまでの期間を見据え、「今が食べ頃」ではなく「数日後に最高の状態になるタイミング」を見極めて収穫する必要があります。

桃は非常にデリケートな果物で、指先に少し力が入るだけでも傷みになることがあり、収穫作業には細心の注意が求められます。こうした熟度の判断や収穫技術は長年の経験によって培われるものです。反田さんをはじめとする熟練生産者の経験と感覚こそが、山梨の桃を支える「匠の技術」なのです。

現在反田さんは、農業法人「株式会社あぐりフルーツ」を中心に、山梨県オリジナル品種の増産と後継者育成に励んでいます。特に新規就農者へ伝えているのが、「多主枝(4本主枝)の仕立て(※3)」です。

通常、桃は安定した収穫ができるようになるまで6~7年ほどといわれていますが、多主枝の仕立てを取り入れることで、植え付けから3~4年の若木でも大玉で高品質な果実を収穫できるようになるといいます。早期の収益化が見込まれるため、新規就農者の経営を支える技術として期待されています。

こうした取り組みを後押ししているのが、「夢桃香」と「夢みずき」です。

夢桃香について反田さんは、「果実が軟らかくならないため、高温による果実軟化の影響を受けにくく、安定した品質の桃を消費者に届けることができます」「無袋栽培でも見事に色づきます。袋掛けの手間が省ける分、桃とブドウを手掛ける生産者にとっては、ブドウの摘粒などに労力をかけられます」と話します。夢桃香は品質安定や省力化につながる品種です。

一方、夢みずきは「梅雨に左右されにくく、甘みを蓄えて大きく育つ桃。大玉である分、収穫前に落下しやすい傾向があるので、バランスよく実を残すことが重要」と話し、摘果には気を遣うそうですが、高品質な果実を生産しやすい品種だといいます。

生産者の収益向上だけでなく、次世代への技術継承を支える存在としても期待されています。

「夢桃香」「夢みずき」の流通について

「夢桃香」は、市場に初めて登場した令和4(2022)年の出荷量は32tでしたが、令和7(2025)年には238tまで増加し、令和8(2026)年には300tを大きく超える見込みです。今後も植えた苗木が成木となるにつれ、出荷量はさらに増加していくことが期待されます。

また、「夢みずき」の出荷量は、令和7(2005)年に946tとなり、令和8年(2026)年には初めて1,000tを超える見込みです。「白鳳」「なつっこ」「日川白鳳」に次ぐ、山梨県内で4番目に出荷量の多い品種となっています。

両品種とも、皆さまのお手元にお届けできる機会もますます増えておりますので、店頭などで見かけることがありましたら、ぜひご賞味ください。

桃王国・山梨県の取り組み

momo_sommelier_logo山梨県では、「夢桃香」や「夢みずき」をはじめとする桃の魅力や価値をより多くの人に伝えるため、さまざまな取り組みを進めています。

桃は品種ごとの違いが見た目では分かりにくく、「桃は桃」「硬い桃は未熟」といった誤解を持たれることもあります。そこで県では、品種ごとの個性やおいしさへの理解を深めてもらうことで、桃の付加価値向上や販路拡大につなげたいと考えています。

その取り組みの一つが、「桃ソムリエ認定制度」です。桃の品種特性や栽培方法、歴史・文化、栄養、保存方法などに関する幅広い知識を持つ人材を認定する制度で、令和8年秋には初めて認定試験が実施される予定です。

また、桃の魅力を広く発信するため、反田さんをはじめとする名誉桃ソムリエによるイベント出演やSNSでの情報発信なども行われています。

6月下旬から9月上旬まで、1週間から10日ほどの間隔で品種が移り変わりながら旬をつないでいく山梨の桃。夢桃香と夢みずき、山梨県でしか栽培されていないこのオリジナル品種が、桃の未来を塗り替えていきます。お気に入りの一玉を見つけながら、山梨の桃が織りなす旬のリレーを味わってみてはいかがでしょうか。

注釈

(※1)硬肉桃

熟してもほとんど軟化せず、カリカリした食感を持つ肉質の桃のこと。成熟に伴うエチレンの発生が起こらないため軟化が進みません。夢桃香は他の硬肉桃と異なり、エチレンをわずかに出すため、果肉が一定の硬度まで軟化する新しいタイプの肉質の桃です。

(※2)名誉桃ソムリエ

令和8年5月22日、桃の品種や食べ方、栽培方法、栄養価など幅広い知識を持ち、桃への深い愛情と情熱を持って語ることができる方12名を「名誉桃ソムリエ」に山梨県が認定しました。

(※3)多主枝(4本主枝)の仕立て

一般的な2本主枝に対し、4本の主枝で樹形を構成する栽培技術。早期成園化や収量の安定化が期待されます。

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